Webサイトの要件定義とは何か。書けなくても発注できる理由
要件定義と発注の実務|まず、全体像から 1本目 全4本
目 次
Webサイトの要件定義とは、作りはじめる前に決めておくことをまとめる作業です。 それを書き出した資料が要件定義書です。
何のために作るのか、誰に見てほしいのか、どんなページが要るのか。そういったことを一覧にしたものです。
ただ、これを発注する側が書き上げてから相談する必要はありません。 書いて来られた方と、何も持たずに来られた方とで、進み方はそんなに変わらないからです。
Webサイトの要件定義とは、何のことか
作る前に決めておくことを、決めておく作業です。
たとえば、こういうことが並びます。
- – 何のためにサイトを作るのか
- – 誰に見てほしいのか
- – どんなページが必要か
- – どんな機能が必要か(問い合わせフォーム、ブログ、検索など)
- – いつまでに公開したいのか
- – いくらまでかけられるのか
家を建てるときに、間取りや設備を先に決めるのと同じ発想です。決まっていれば、作る側は迷わずに進めます。
ここまでは、どの制作会社の説明もだいたい同じだと思います。
詳しくなっていただく必要はありません
初回のご相談で、いちばんよく聞く一言があります。
「ホームページについて、全然詳しくないんですが」
謝るように、そう前置きされる方が多いです。
詳しくなくて構いません。詳しい方のほうが少ないです。 年に何度もサイトを作る会社はありませんから、当然だと思います。
このあと用語の整理をしますが、覚えていただく必要はありません。そういう言葉があるらしい、くらいで十分です。
要件定義書・仕様書・RFPの違い
書く中身と、書く人が違います。
| 言葉 | 何を書くもの | 誰が作るもの |
|---|---|---|
| 要件定義書 | 何を作るか | 発注する側/または一緒に |
| 仕様書 | どう作るか(より細かい・技術寄り) | 作る側が中心 |
| RFP(提案依頼書) | 提案してほしい内容と、その条件 | 発注する側 |
| 提案書・見積書 | それに対する回答 | 制作会社側 |
仕様書については、Web制作の仕様書とは。要件定義書との違いと、実際に必要な場面に詳しく書いています。
そして、こちらもよく混ざります。
| 言葉 | |
|---|---|
| ホームページ/ウェブサイト | 日常会話では、ほぼ同じ意味で使われています |
厳密には違うのですが、打ち合わせでどちらを使われても、私たちは困りません。
混ざっていても、大丈夫です
正直に書くと、この区別を覚えていただく必要はありません。
「RFPを作らないと」とおっしゃりながら要件定義書に近いものを持ってこられる方も、要件定義書として作ったものを複数社に配っている方もいらっしゃいます。どちらも珍しくありません。
区別が必要なのは、受け取る制作会社の側です。呼び方が何であれ、書かれている中身を見れば分かります。
実務上、私たちが確認するのは1つだけです。
「これ、何社にお渡しになりますか」
1社なら要件定義書として、複数社ならRFPとして扱います。それだけの違いです。詳しくはRFPと要件定義書、混ざっていて大丈夫ですに書きました。
なぜ制作会社は「要件を固めてから」と言うのか
決まっていないことが多いと、見積もりが出せないからです。
「要件を固めてから来てください」と言われた経験のある方は、少なくないと思います。
ページ数も機能も分からない状態では、金額の出しようがありません。これは、もっともな話です。 制作会社が意地悪をしているわけではありません。
ただ、そこで起きているのは、こういうことです。
- – 発注する側は、決められないから相談したい
- – 制作会社は、決まっていないと受けられない
間に、誰もいません。
多くの方がここで止まります。テンプレートをダウンロードして、開いて、埋まらないまま閉じる。
この止まり方については、要件定義書のサンプルを見て、逆に手が止まる理由に書きました。
2026年、AIで作った要件定義書が増えています
そして、起きていることがテンプレート時代と正反対になっています。
| これまで | 現在 | |
|---|---|---|
| 起きること | 埋まらなくて手が止まる | 埋まりすぎて、要らないものが混ざる |
| 書類の状態 | 空欄が多い | 整った文章で、分量が多い |
| ご本人の理解 | 埋めた分は理解している | たぶん読み返していない |
分量が多いので、無理もありません。
ただ、ここが大事なところで、それは嘘の書類ではありません。
AIに投げる前の元の言葉は、ご本人が書いたものです。芯は本物ですし、読んでいくと筋も通っています。AIが肉をつけすぎて、輪郭が見えなくなっているだけです。
捨てなくて大丈夫です。読み方を変えれば、そのまま使えます。
その書類の中から「これは自分の言葉だ」と思える部分だけを拾い直してみてください。たいてい、そこがいちばん正確です。
拾い直す目安は、要件定義書の34項目を「書く/書かない」で仕分けしましたの11項目が使えます。
要件定義書が書けない場合、Web制作はどうなるのか
書かなくても、進みます。
年間40本ほどのサイトを作っていますが、書き上げて来られた方と、何も持たずに来られた方とで、進み方はそんなに変わりません。
「まったく同じ」とは言いません。書類がある場合、こちらの理解が早い部分はあります。ただ、公開までの期間や手戻りの回数といった、実際に困る部分に差は出ていません。
理由は、私たちが情報を得ているのが書類そのものではなく、お話を伺っている時間だからです。
書類がない場合は、こうなります。
| ヒアリング | 45分 |
| デモの提示 | その1週間後(全ページ分) |
| 公開まで | 1.5〜2か月 |
決めきれていなかった部分は、そのデモを見ながら決めていきます。
先に完璧に決めるのではなく、あとで直せる状態を先に作る。
詳しくは要件定義書がなくても、Web制作は進みますに書いています。
状況別|次に読む記事
要件定義まわりの話は、状況によって知りたいことが違うと思います。行き先だけ置いておきます。
| いまの状態 | 読む記事 |
|---|---|
| とにかく書式が欲しい | 要件定義書テンプレート【記入例つき】 |
| 書式はあるが、どこから埋めるか分からない | 34項目を「書く/書かない」で仕分けしました |
| 書けなくて止まっている | 要件定義書がなくても、Web制作は進みます |
| 完成イメージが湧かない | 「イメージが湧かない」まま、進める方法があります |
| なぜ1週間でデモが出るのか知りたい | なぜ1週間で全ページ分のデモが出せるのか |
| 社内の誰が書くべきか迷っている | ホームページの要件定義、社内の誰が書くべきか |
| デザインをどう伝えるか困っている | デザイン要件定義書は必要か。参考サイト1本のほうが正確です |
| どこまで揃えてから相談すべきか迷う | 制作会社に渡す情報は、どこまで揃えてから相談すべきか |
| リニューアルで何を引き継ぐか迷う | サイトリニューアルの要件定義。既存サイトのどこを引き継ぐか |
| 公開までの日程を知りたい | 要件定義から公開まで、実際のスケジュールを出します |
| 要件定義だけ外注できるか知りたい | 要件定義だけを外注できるか。その前に確認したいこと |
| 固まらないまま進めるのが不安 | 要件が固まらないまま進めた案件は、その後どうなったか |
要件定義書を作るべきケース・作らなくていいケース
作ったほうがいいケース
- – 稟議で、着手前に仕様の承認が必要
- – 複数社に同一条件で相見積もりを取る
- – 官公庁の入札など、提出形式が指定されている
この3つは、書類が制作のためではなく手続きのために必要なケースです。この場合は作る必要があります。私たちもその形でお受けできます。
ただ、その場合でも、お客さまだけで完成させる必要はありません。ヒアリングのあと、こちらで下書きをお作りします。書類が要る場合も、宿題としてはお渡ししません。
作らずに進めていいケース
- – 上の3つに当てはまらない
- – 何から決めればいいか分からない
- – 社内に専任の担当者がいない
- – 決めきる自信がなく、見てから判断したい
締め
要件定義とは、作る前に決めておくことをまとめる作業のことです。そして、それを発注する側が完成させてから相談する必要は、多くの場合ありません。
「ホームページについて、全然詳しくないんですが」——その状態から始めていただいて大丈夫です。
詳しくなっていただく必要も、書類を完成させていただく必要もありません。
そのままの状態でご相談ください。
要件定義書は、書かなくて大丈夫です。