ホームページの要件定義、社内の誰が書くべきか
要件定義と発注の実務|準備と、進め方 1本目 全8本
目 次
ホームページの要件定義書を書く人は、決めなくて構いません。
私たちの場合、書類を作っていただかなくても制作は進みます。
代わりに、決めておいていただけると早いことが2つあります。連絡の窓口になる方と、最終的に決める方です。
ホームページの要件定義を「誰が書くか」は、たいてい社内で決まっていません
「誰が書くべきか」と調べていらっしゃる時点で、まだ担当が決まっていない状態だと思います。あるいは、自分に回ってきたけれど自信がない、という状態かもしれません。
どちらも普通のことです。年に何度もサイトを作る会社はありませんから、社内に慣れた人がいなくて当然です。
初回のご相談で、いちばんよく聞く一言があります。
「ホームページについて、全然詳しくないんですが」
担当になった方が、そう前置きされます。詳しくなくて構いません。
よくある候補と、実際のところ
社内で候補に挙がるのは、だいたい次のどれかだと思います。
| 候補 | 挙がる理由 |
|---|---|
| 総務・管理部門 | 社外とのやり取りに慣れていて、社内調整もしやすい |
| 広報・マーケティング | 業務としていちばん関係が近い |
| 社長・役員 | 最終的に決めるのはこの人だから |
| 現場の責任者 | 中身をいちばん分かっているから |
どれが正解か、という話をよくいただきます。
私たちの経験では、役職では決まりません。
言葉にできない状態から進める方法は「イメージが湧かない」まま、進める方法がありますに書いています。総務の方でうまく進む案件もあれば、止まる案件もあります。社長が窓口でも同じです。広報の方だから速い、ということもありません。
止まるかどうかは、役職ではなく「現場を持っているか」で決まります
では、何で決まるのか。
その方が、現場を持っているかどうかです。
自分の手で回している仕事を持っている方——営業をされている、現場に出ている、施工を管理している、といった方が窓口になると、確認のやり取りは後ろに回りやすくなります。
当然です。サイトの確認より、目の前の仕事のほうが先です。責める話ではまったくありません。本業が優先されるのは、正しい判断だと思います。
役職は関係ありません。社長でも、現場に出ていれば同じことが起きます。逆に、総務の方で他の業務が落ち着いていれば、確認は速く返ってきます。
つまり、確認が返ってくる速さを決めているのは、役職ではなくその方が今どれだけ手を動かしているか、ということになります。
そして多くの場合、中身をいちばん分かっている人ほど、現場を持っています。
ただし、これは「選び方」ではありません
ここを混同しないでください。
いま書いたのは、確認が返ってくる速さの話です。担当を選ぶ基準ではありません。
いちばんよくないのが、この選び方です。
「あの人なら手が空いていそうだから」
手が空いていそうかどうかで選ぶと、うまくいきません。理由は2つあります。
ひとつは、手が空いているように見える人が、実際に空いているとは限らないこと。外から見えない仕事はいくらでもあります。
もうひとつのほうが大きいのですが、その選び方には、サイトにとっての判断材料が何も入っていないからです。
選ぶなら、前からサイトを見ていた方です
社内に「前のサイトのとき、やり取りをしていた人」がいらっしゃるなら、その方がいちばん適任です。
理由は、経緯を知っているからです。
- – ドメインをどこで取ったか
- – サーバーの契約が誰の名義になっているか
- – 前の制作会社と、どういうやり取りがあったか
- – 過去に何を試して、何がうまくいかなかったか
これらは、調べれば分かるものもありますが、時間がかかります。 そして最後の1つは、社内の記憶にしか残っていません。
私たちが「必ず教えてください」とお願いしている項目の中に、「現在のドメイン・サーバー」と「前の制作会社との関係」があります。この2つは、前から見ていた方なら即答できます。 そうでない方だと、社内を探すところから始まります。
同じ45分のヒアリングでも、密度がまったく変わります。
その方が現場を持っていても、構いません
前からサイトを見ていた方が、いまは現場に出ている——ということもあると思います。
それでも、その方を窓口にしていただくほうがいいです。何を聞かれるかは要件定義書の34項目を「書く/書かない」で仕分けしましたにまとめています。確認が遅れる件は、こちらが進め方で吸収できます。経緯を知らないことは、吸収できません。
前任者がすでに退職されている場合
よくあります。その場合は、分かる範囲で構いません。
「前の担当者がもういないので、何も分からない」——そう言っていただければ、そこから調べる前提で進めます。ドメインやサーバーの調べ方は、こちらでご案内します。
プレイヤーが窓口だと、まずいのか
まずくありません。
私たちが最初にこれを伺うのは、担当を替えていただくためではないからです。進め方をこちらで変えるためです。
窓口の方が現場をお持ちだと分かっていれば、確認を待つ前提で進行を組みません。待っている間も、こちらは先に進めておきます。
一般的なWeb制作では、こういう場面が出てきます。
- – 原稿をお待ちしています
- – ご確認をいただいてから次に進みます
- – 修正のご指示をお待ちしています
私たちは、この形を取っていません。デモをスタート地点に置いているのは、そのためです。まずこちらが形にして、それを見ながら決めていただきます。
止まる原因を減らすのではなく、止まらない進め方に変えている、という言い方が近いと思います。
要件定義の前に決めておくと早いこと、2つだけ
1. 連絡の窓口になる方
1人で十分です。 その方がWebに詳しい必要はありません。
やっていただくのは、こちらからの連絡を受けて、社内に回していただくことです。内容の判断まで担っていただく必要はありません。
「詳しくないので自分では決められません」という状態で、まったく問題ありません。
選べるのであれば、前からサイトを見ていた方を。いらっしゃらなければ、どなたでも構いません。
2. 最終的に決める方
こちらのほうが重要です。
デモをご覧いただくと、社内の複数の方から意見が出ます。それ自体はいいことなのですが、意見が並んだまま優先順位がつかないと、そこで止まります。 書類があってもなくても、これは同じです。
ですので、意見が割れたときに誰が決めるかだけ、先に決まっていると早く進みます。
分野ごとに分かれていても構いません。
「デザインは社長が決める。文章は広報の担当者。採用ページは人事部長」
このような形でも、まったく問題ありません。決まっていることが大事です。
ホームページの要件定義書を「書く人」を決めなくていい理由
ここまで、書く人の話をしていません。
私たちの場合、要件定義書を書いていただかなくても進むからです。
45分のヒアリングを行い、そこで聞ききれなかった部分は、これまでの案件から補います。そして1週間後に全ページ分のデモをお出しして、そこで答え合わせをします。
書類を書く担当を決める必要も、社内で分担する必要もありません。「誰が書くか」で社内が止まること自体を、なくしています。
もし社内の稟議などで書類が必要な場合は、ヒアリングのあとこちらで下書きをお作りします。 その場合も、宿題としてはお渡ししません。
社内で意見を集めておく必要は、ありますか
ありません。
「事前に各部署の要望をまとめておいたほうがいいですか」と聞かれることがありますが、まとめていただかなくて大丈夫です。
理由は、まとめる段階で情報が減るからです。要望を集約すると、たいてい当たりさわりのない言葉になります。そして、当たりさわりのない要望からは、当たりさわりのないサイトしか出てきません。
集めていただくより、デモをご覧いただいたときの反応を伺うほうが、はるかに具体的なものが出てきます。
このあたりは、ヒアリングの話として別の記事に書いています。
向くケース・向かないケース
この進め方が合うケース
- – 社内に専任の担当者がいない
- – 担当になった方が、他の業務と兼務している
- – 前の担当者が退職していて、経緯が分からない
- – 過去に、確認待ちでプロジェクトが止まった経験がある
- – 誰が書くかで社内が決まらず、着手できていない
合わないケース
- – 社内の規程で、着手前に要件定義書の承認が必要
- – 複数社に同一条件で相見積もりを取る必要がある
この2つは、書類が制作のためではなく手続きのために必要なケースです。この場合は書類を作ります。ただ、その場合も担当の方が一人で抱える必要はありません。ヒアリングのあと、こちらで下書きをお作りします。
締め
要件定義書を書く人は、決めなくて構いません。
決めておいていただけると早いのは、連絡の窓口になる方と、最終的に決める方の2つだけです。どちらも、Webに詳しい方である必要はありません。
選べるのであれば、前からサイトを見ていた方を窓口に。経緯を知っている方がいるだけで、立ち上がりがまったく違います。手が空いていそうかどうかで選ぶのは、おすすめしません。
そして、その方が現場をお持ちでも問題ありません。分かっていれば、こちらが待たない進め方にします。
担当になったばかりで、何から手をつければいいか分からない——という状態で構いません。
そのままの状態でご相談ください。
要件定義書は、書かなくて大丈夫です。