RFPと要件定義書、混ざっていて大丈夫です
要件定義と発注の実務|書類そのものの話 4本目 全6本
目 次
RFPと要件定義書が混ざっていても、大丈夫です。
区別が必要なのは制作会社の側であって、発注される方の側ではありません。
実務上、区別が要る場面はひとつだけ。それは呼び方ではなく、「何社にお渡しになるか」です。
RFPと要件定義書は、実際に混ざっています
私たちのところに来る書類は、けっこう混ざっています。
- – 「RFPを作らないと」とおっしゃりながら、出てくるのは要件定義書に近いもの
- – 要件定義書として作られたものを、そのまま何社かに配っている
どちらの方向も起きています。 そして、どちらも問題なく進んでいます。
ご相談の第一声で、こう言われることがあります。
「ホームページについて、全然詳しくないんですが」
この状態で、RFPと要件定義書の使い分けまで求めるのは、無理があると思っています。
「混同しないよう注意しましょう」と書かないことにしました
この件を調べると、たいてい次のように書かれています。
「RFPと要件定義書は別物です。混同しないよう注意しましょう」
間違ってはいません。ただ、読んだ方はこう思うはずです。
「じゃあ、自分が作ったのはどっちなんだ」
そこで手が止まります。せっかく作りかけたものを、正しいかどうか判定する作業が新しく増えます。これは宿題です。
私たちの答えは、こちらです。
「どちらでも構いません。こちらで見分けます。」
見分けるのは、こちらの仕事です。書類を受け取って中身を読めば、何をしたい書類なのかは分かります。分からなければ伺います。
一応、RFPと要件定義書の違いを書いておきます
求められている情報なので、書きます。覚えていただく必要はありません。
| RFP | 要件定義書 | |
|---|---|---|
| 目的 | 提案してもらう | 作るものを決める |
| 言っていること | 「こういうことをやりたいので、提案と見積をください」 | 「こう作ります」 |
| 読む相手 | 複数の制作会社 | 決まった1社 |
| 書く時点 | 会社を選ぶ前 | 会社が決まったあと |
| 中身の粒度 | 目的と条件が中心 | 仕様まで踏み込む |
教科書的な順番は、RFPを配る → 提案を受けて選ぶ → 選んだ会社と要件定義書を作る、です。
ただ、この順番どおりに進む案件は、そう多くありません。先に相談する会社が1社決まっていて、その会社と一緒に書類を作る、という進み方のほうがよく見ます。その場合、RFPの工程はそもそも発生しません。
順番どおりでないから間違い、ということはありません。
区別が要る場面は、ひとつだけです
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
「これ、何社にお渡しになりますか」
この一問で、必要なことは決まります。
| 1社に渡す | 複数社に渡す | |
|---|---|---|
| 実質的に | 要件定義書 | RFP |
| 必要なもの | 中身だけで足ります | 中身+4つの追加 |
複数社に渡す場合に足りなくなるのは、この4つです。
- 1. 提出の期限と、提出先
- 2. 見積の内訳を、どう割ってほしいか
- 3. 何を基準に選ぶか、いつ決めるか
- 4. 秘密保持についての一文
呼び方の定義よりも、この4つがあるかないかのほうが、実務では効きます。
変わるのは、見積の内訳の割り方です
4つのうち、抜けると困るのがこれです。
複数社から見積を取ったのに、比べられないという状態がよく起きます。原因は、割り方を指定していないことです。
たとえば、こういう見積が並びます。
| A社 | B社 |
|---|---|
| 一式 120万円 | デザイン 40万円 実装 60万円 CMS構築 20万円 |
この2つは、比較できません。 合計が同じでも、何にいくらかかっているかが分からないので、どちらが妥当かを判断できません。
結果として、合計金額だけで選ぶことになります。
ですので、RFPを配るときは割り方を指定してしまうのがいちばん早いです。
- – ページ制作費と、システム・CMS部分を分けてください
- – 初期費用と、公開後にかかる費用を分けてください
- – 写真撮影・原稿作成が含まれるかどうかを、明記してください
このくらいで十分です。指定されて困る制作会社は、たぶんありません。
書類の名前は、どちらでも構いません
タイトルに「RFP」と書いてあっても、渡す先が1社なら、要件定義書として扱います。
「要件定義書」と書かれたものを何社かに配っておられるなら、それはRFPとして機能しています。足りない4つをこちらから補います。
書類の名前を直していただく必要はありません。
私たちが伺うのは、渡す先が何社か、ということだけです。
私たちにご依頼いただく場合
私たちは、記入例つきの要件定義書テンプレートを配布しています。これはRFPとしても使えます。 複数社に渡される場合だけ、先ほどの4つを足してください。
そして、これも書いておきます。テンプレートを埋めていただく必要はありません。
45分お話を伺って、こちらで下書きをお作りします。それを見ながら整えていただくほうが、はるかに早く終わります。複数社に配るための書類でも、同じです。
私たちが選ばれないかもしれない書類を、私たちが作ることになりますが、それで構いません。書類作りで止まっているほうが、もったいないので。
要件定義そのものの整理はWebサイトの要件定義とは何か、34項目の仕分けは要件定義書の34項目を「書く/書かない」で仕分けしました、要件定義だけの外注は要件定義だけを外注できるか、制作会社による違いは要件定義書を求める制作会社と、求めない制作会社の違いに書いています。
向くケース・向かないケース
この記事のとおりで大丈夫なケース
- – どちらを作ればいいのか分からず、止まっている
- – 作ったものが正しいか、自信がない
- – 名前は分からないが、やりたいことは決まっている
- – 何社かに声をかけたいが、書類の作り方が分からない
きちんと区別が必要なケース
- – 公共の入札、またはそれに準じた手続き
- – 社内規程で、調達の様式が定められている
- – 親会社やグループの購買部門を通す必要がある
この場合は、様式が先に決まっています。名前も中身も、その様式に合わせることになります。その場合も、書き上げるのはこちらでお手伝いできます。 様式を見せていただければ、それに合わせて下書きを作ります。
書類がなくても進む理由は要件定義書がなくても、Web制作は進みますに書きました。
締め
RFPと要件定義書が混ざっていても、大丈夫です。区別が必要なのは、こちらの側です。
実務で効くのは呼び方ではなく、何社にお渡しになるか。1社なら中身だけで足ります。複数社なら、提出期限・見積の割り方・選定基準・秘密保持の4つを足してください。
判定していただく必要も、書き直していただく必要もありません。作りかけのままで構いません。 そのままの状態でご相談ください。
要件定義書は、書かなくて大丈夫です。