「イメージが湧かない」まま、進める方法があります
要件定義と発注の実務|準備と、進め方 5本目 全8本
目 次
「イメージが湧かないのですが」と前置きされる方は多いのですが、湧かないまま進めて大丈夫です。
というより、湧いていないのではなく、言葉になっていないだけという場合がほとんどです。
実際、見ていただくと即座に「これは違う」「これはいい」と判断されます。私たちは、その判断だけをお借りしています。
説明できないことと、分からないことは違います
判断はできています。できていないのは、それを先に言葉にすることだけです。
打ち合わせで、こういうやり取りがよく起きます。
「どんな感じにしたいですか」と伺うと、「うーん、イメージが湧かなくて」と返ってくる。
ところが、その方に他社のサイトをいくつかお見せすると、3秒で「これは違いますね」とおっしゃいます。
これは能力の話ではなく、種類が違うという話だと思っています。
| 記述する力 | 頭の中にあるものを、言葉に変換して他人に渡す力 |
| 判断する力 | 目の前にあるものが、合っているかどうかを見分ける力 |
要件定義書は、前者を全面的に要求します。
「サイトの目的を記述してください」「ターゲット像を具体的に記述してください」——全部、記述です。
でも、Webサイトを作るのに本当に必要なのは、後者のほうです。
ウェブサイトの要件定義で、私たちが実際に見ているもの
話の内容そのものより、2か所です。
- 1. 最初に口に出された項目
- 2. 説明が急に長くなった項目
この2つが、その会社にとって本当に重要な項目です。
ここで大事なのは、どちらもご本人が意図して発しているものではないということです。「これが重要です」と整理して伝えていただく必要がありません。話していれば、勝手に出ます。
つまり、イメージが湧いていなくても、話していただければ材料は出てきます。整理してから来ていただく必要がないのは、そのためです。
「イメージが湧かない」には、4つの種類があります
ひとくちに言っても、中身は違います。私たちが伺ってきた範囲では、だいたい次の4つに分かれます。
| 湧かないもの | 実際に必要なこと |
|---|---|
| 見た目が浮かばない | 言葉にしなくて結構です。参考サイトを1本お持ちください |
| 何を載せるかが浮かばない | 業種と困りごとが分かれば、こちらから案を出します |
| 何のために作るのかが浮かばない | 2行で結構です。長く書く必要はありません |
| いくらかかるかが浮かばない | 幅で結構です。決まっていなければ、そう言ってください |
1つ目が、いちばん多いパターンです
「シンプルで」「高級感のある」といった言葉を絞り出そうとされる方がいますが、その必要はありません。
同じ言葉でも、人によって思い浮かべるものが違うので、正確に伝わる保証がないからです。
参考サイトなら、ずれません。他社のサイトでも、他業種のサイトでも構いません。1本あれば、文章10行よりも正確です。
言葉にできないものを、URLで渡していただく。 それだけです。
3つ目は、書き方の問題であることが多いです
「何のために作るのか」が浮かばないというより、立派に書かなければいけないと思って浮かばなくなっていることがあります。
「採用で応募が集まらない。応募を増やしたい」
この2行で十分です。
順番を逆にすれば、湧かなくても進みます
イメージが湧かない状態で止まるのは、進め方の順番が「決めてから作る」になっているからです。
この順番だと、決まっていない状態のまま相談できる場所がありません。
私たちは、この順番を取っていません。
先に形にして、それを見ながら決めていきます。判断する力だけをお借りする形です。記述する力は、最後まで使いません。
45分の話だけで全ページ分を先に出す方法は、なぜ1週間で全ページ分のデモが出せるのかに書きました。
そうすると、こういう反応になります。
「このままでもアップできるクオリティですよね」
これは、決まっていなかったものが決まった瞬間の言葉です。ご自身で記述されたわけではありませんが、判断はご自身でされています。
「何も決めない」進め方ではありません
念のため書いておきます。
決めていただいています。ただ、決める場所が、紙の上ではなく画面の上になっているだけです。
「この見出しは違う」「ここはもっと写真が大きいほうがいい」「この順番を入れ替えたい」——出てくる指摘は、要件定義書に書かれる内容とほとんど同じです。
違うのは、実物を見ながら言えることだけ。言葉が先か、実物が先か。それだけの差です。
ひとつだけ、先に決めておくと早いこと
最終的に誰が決めるか、です。
イメージが湧かなくても大丈夫なのですが、社内で意見が割れそうな場合だけ、ここを先に決めておいていただけると早く進みます。
デモをご覧いただくと、社内の複数の方から意見が出ます。それ自体はいいことなのですが、意見が並んだまま優先順位がつかないと、そこで止まります。 書類があってもなくても、これは同じです。
「デザインは社長、文章は広報の担当者」のように、分野ごとに決める人が分かれていても構いません。 決まっていることが大事です。
この話はホームページの要件定義、社内の誰が書くべきかに詳しく書いています。
向くケース・向かないケース
向いているケース
- – 見ないと判断できない。言葉では決められない
- – 何度か制作会社に相談したが、「イメージを固めてから来てください」と言われて止まっている
- – 社内でWebサイトを作った経験がなく、何を求められているのか分からない
- – 忙しくて、資料を作る時間が取れない
向いていないケース
- – 着手前に、文書で仕様を確定させる必要がある
- – 稟議や入札で、承認を得てからでないと作業に入れない
- – すでに社内で細かく仕様が固まっていて、そのとおりに作ってほしい
3つ目は、向いていないというよりこの進め方の出番がないケースです。決まっているなら、そのまま作ります。
締め
イメージが湧かないのは、準備不足ではありません。言葉にする作業を先に求められているだけです。
見れば判断できます。私たちは、その判断だけをお借りして進めます。
「まだ何も固まっていないのですが」という前置きは、いちばんよく聞く一言です。困ることは、特にありません。
書類がまったくない場合の進み方は、要件定義書がなくても、Web制作は進みますに書いています。
そのままの状態でご相談ください。
要件定義書は、書かなくて大丈夫です。