キューポイントのやり方

御社が使っているもので進めます

目 次

  1. 宿題は、宿題の顔をして出てこない
  2. 実際に、どこまで合わせているか
  3. ツールは、誰のためのものだったか
  4. なぜ、うちは合わせられるのか
  5. 分業をやめたのは、思想の話ではありません
  6. そうしたら、ツールが要らなくなりました
  7. 何が散らかったか
  8. まとめ

制作が始まるとき、こう言われることがあります。

「弊社のプロジェクト管理ツールに登録をお願いします」

うちは、これをお願いしません。

御社がふだん使っているもので進めます。 メールならメール、チャットならチャット、電話が早ければ電話です。


宿題は、宿題の顔をして出てこない

私は「お客さまに宿題を出さない」と言っています。原稿を書いてください、写真を選んでください、といったお願いをしません。

ただ、いちばん見落とされる宿題は、宿題に見えない形で出てきます。(宿題そのものの話は要件定義書がなくても、Web制作は進みますに書きました)

  • 「アカウントを作っておいてください」
  • 「共有フォルダにアップしておいてください」
  • 「このシートに記入をお願いします」
  • 「チャットで確認しておいてください」

どれも「ちょっとしたこと」の顔をしています。

でも実際には、こういうことです。

お願いしていること実際に起きること
ツールに登録使い方を覚える。通知の設定をする。パスワードを管理する
共有フォルダ場所を覚える。開けなくて連絡する
チャットの確認見る場所が1つ増える。見落とす

そしてそのプロジェクトが終わったら、二度と使いません。

数か月のために覚えるものが、いちばんもったいない宿題です。


実際に、どこまで合わせているか

抽象的な話になりそうなので、先に実物を書きます。

これまで実際に進行に使ったものです。

  • LINE/LINE WORKS
  • Chatwork
  • Slack/Teams
  • メールと電話だけ

最後のものが、いちばん多いかもしれません。チャットを使っていない会社は、まだたくさんあります。

そういう会社にこそ、制作会社は自社ツールを勧めたくなります。 「そのほうが効率がいいので」と。私も、その理屈は分かります。


ツールは、誰のためのものだったか

制作会社がツールを導入するのは、たいてい「効率化のため」です。これは本当です。

ただ、効率化されるのは制作会社側です。

  • やりとりが1か所にまとまる
  • 誰が何を言ったか残る
  • 担当者が変わっても引き継げる

全部こちら側の都合です。 お客さまにとっては、慣れない場所が1つ増えるだけのことがあります。

これも、他社さんが悪いという話ではありません。理屈は通っています。 ただ、負担がどちらに乗っているかというと、乗っているのはお客さま側です。


なぜ、うちは合わせられるのか

ここが、この記事でいちばん書きたかった部分です。

うちが相手に合わせられるのは、親切だからではありません。体制が変わったからです。

うちは以前、分業でやっていました。ディレクターがいて、デザイナーがいて、コーダーがいる。この形だと、情報を1か所に集める必要があります。

なぜなら、引き継ぎが発生するからです。

ディレクターが聞いた話を、デザイナーに渡す。

デザイナーが決めたことを、コーダーに渡す。

このとき、情報がバラバラの場所にあると回りません。 だからツールで1か所にまとめる。必然です。


分業をやめたのは、思想の話ではありません

正直に書きます。採算が合わなくなったからです。

制作の単価は、この十数年で下がりました。それ自体は、うちの努力でどうなるものでもありません。

問題は、下がったのに、ディレクションのほうは増えていたことです。

分業でやる以上、引き継ぎは必ず発生します。 聞いた話を渡す、決まったことを伝える、認識がずれていないか確かめる。これは全部必要な仕事です。ただ、画面が1ミリも進まない仕事でもあります。

単価が下がる中で、その工数だけが積み上がっていきました。そこで採算が合わなくなりました。

だから、分業をやめました。ひとりが最初から最後まで持つ形にしました。

お客さまのためではありません。続けられなかったからです。


分業と一気通貫で、ツールの扱いがどう変わるか分業だと引き継ぎのため情報を1か所に集める必要がある。一気通貫だとその必要がない分業だったとき分業引き継ぎがある情報を1か所に自社ツールいま一気通貫引き継ぎなし集める必要なし相手に合わせるツールを指定するかどうかは、方針ではなく体制の結果です

そうしたら、ツールが要らなくなりました

分業をやめて、しばらくしてから気づきました。

引き継ぎ情報を集める必要相手に合わせられるか
分業ある必要難しい
一気通貫ない不要できる

渡す相手がいなければ、情報を1か所に集める理由がありません。 どこでやりとりしていても、聞いた本人がそのまま作るので、困らない。

「御社のやり方に合わせます」は、心がけではありません。

引き継ぎをなくしたら、どこで進行しても困らなくなった。それだけです。

そして念のため書いておくと、これは狙ってやったことではありません。 合わせるために分業をやめたのではなく、分業をやめたら合わせられるようになったという順番です。


何が散らかったか

そのかわり、うちの中は散らかっています。

案件ごとに、連絡している場所が違います。この案件はChatwork、この案件はLINE、この案件はメールだけ。まとめて一覧で見ることはできません。

これは、はっきり非効率です。

それでもこうしているのは、散らかるのがこちらの中だけで済むからです。お客さま側に負担を移すよりは、こちらが散らかっているほうがいい。それだけの判断です。


まとめ

  • ツールへの登録は、宿題の顔をしていない宿題
  • 数か月のために覚えるものが、いちばんもったいない
  • 制作会社のツールは、制作会社のために必要(引き継ぎがあるから)
  • 分業をやめたのは、採算が合わなくなったから。 思想ではありません
  • やめてみたら引き継ぎが消えて、結果として合わせられるようになった
  • 代わりに、うちの中は散らかっている

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