キューポイントのやり方

原稿をお待ちしません

目 次

  1. なぜ「ご用意ください」になるのか
  2. そして、こちらも止まります
  3. いちばん長いときで、数か月止まりました
  4. だから、待たないことにしました
  5. 「書く」より「直す」ほうが、ずっと速い
  6. お願いするのは、45分だけです
  7. 何が増えて、何が減ったか
  8. まとめ

ホームページを作るとき、たいていこう言われます。

「原稿と写真をご用意ください」

これが、この業界の標準です。というより、私が始めた頃は、原稿は先方支給が当たり前でした。 私もそう言っていました。

いまは言いません。原稿は、こちらで書きます。


なぜ「ご用意ください」になるのか

先に書いておきたいのですが、これは他社さんの手抜きではありません。

その会社のことを、いちばん知っているのはその会社の方です。だから書いていただくのが正しい、という理屈は通っています。私も長いあいだ、そう思っていました。

ただ、渡された側から見ると、こうなります。

本業のあとに、書く。

現場から戻って、見積を作って、電話に出て、そのあとに「弊社の強み」を600字。

書けないのではありません。順番が来ないんです。


そして、こちらも止まります

ここがあまり語られない部分だと思います。

原稿を待っているあいだ、制作側も止まっています。

文章が入らないと、レイアウトが決まりません。ページの分量が決まらないと、写真の点数も決まりません。待ち時間は、両方が止まっている時間です。

そして厄介なのは、この時間が誰の責任にもならないことです。

  • 制作会社「原稿をお待ちしています」
  • お客さま「すみません、今週中には」

どちらも間違っていません。 誰も悪くないまま、1か月が過ぎます。


いちばん長いときで、数か月止まりました

具体的に書きます。

原稿を待って、数か月動かなかった案件があります。 制作の作業量の問題ではありません。文章が来ないので、その先に進めなかった。それだけです。

念のため書いておきますが、これはお客さまが悪い話ではありません。

そのとき私がやっていたのは、「社内に、原稿を書く時間のある人がいる」という前提で工程を組むことでした。その前提が成り立つ会社もあります。成り立たない会社のほうが多い、というだけです。

前提を間違えたのは、こちらです。

そして数か月というのは、お客さまの時間だけの話ではありませんでした。その間、こちらの手も止まっています。待ち時間は、両側から食べていきます。

私が見てきた限り、サイト制作が遅れる原因のいちばん大きいものは、これです。作る速さではなく、待ち時間のほうです。


原稿を待っているあいだ、両側が止まっている原稿の到着を待つ期間は、お客さま側も制作側も作業が進んでいないお客さま打ち合わせ本業のあと、原稿を書く内容を確認制作会社ヒアリング原稿を待っている制作を再開この期間は、誰の手も動いていません。長いときで数か月ありました

だから、待たないことにしました

原稿は、こちらで書きます。

材料は、そのときあるものを使います。毎回同じではありません。

元にするもの
最初の45分でうかがった話いちばん大きい材料です
いまのサイト、会社案内、パンフレットすでに言葉になっているものは全部使います
現場の写真、これまでの施工事例事実はここに入っています

社内に文章が溜まっている会社なら、そこから起こします。ほとんど何もない会社なら、取材で聞いた話から書きます。どれを使うかは、その会社によります。

これで、全ページ分の文章を先に書いてしまいます。 そして1週間後に、文章が入った状態のデモをお見せします。

ここが大事なところなのですが、私が書いた文章が正しいとは思っていません。

外れているところは、必ずあります。だから見ていただいて、違うと言っていただくための1週間です。


「書く」より「直す」ほうが、ずっと速い

白い紙に600字書くのは、大変です。

でも、目の前にある600字のうち、違う1行を指すのは簡単です。

「ここ、うちは自然素材が売りみたいに書いてありますけど、

 実際は断熱のほうを見てもらいたいです」

この一言で直ります。 30秒です。

同じことを白い紙からやろうとすると、何日もかかります。やっていることは同じなのに、順番が違うだけで負担がまったく変わります。


お願いするのは、45分だけです

打ち合わせからの流れは、こうなります。

最初のお打ち合わせ45分
その1週間後文章と写真の入ったデモをお見せします
そこから見て、違うところを教えていただきます
公開までキックオフから1か月半〜2か月

こちらからお願いするのは、最初の45分だけです。45分の中身は要件定義のヒアリングは45分ですに書いています。

そのあとにお客さまがすることは、出てきたものを見て、違うと言っていただくことです。書いていただくことも、集めていただくことも、締切をお預けすることもありません。


何が増えて、何が減ったか

原稿をこちらで書くということは、取材して、調べて、書いて、確認していただく工程がまるごと増えるということです。待っていれば届いていたものを、自分で作っています。

それでもこちらでやるのは、そのほうが早く終わるからです。

待ち時間は、誰の手も動いていない時間です。そこを消したほうが、全体としては短くなります。 うちの手が動いている時間は増えましたが、お客さまの止まっている時間はなくなりました。

では、増えた分はどこへ行ったのか。その話は、この連載の5本目で書きます。


まとめ

  • 原稿が届かないのは、書けないからではなく、順番が来ないから
  • 待ち時間は、両方が止まっている時間。いちばん長いときで数か月止まりました
  • 止まったのは、書く時間のある人が社内にいる前提で組んでいた、こちらの問題
  • だから先にこちらで書いて、1週間後に見ていただく
  • 白紙に書くより、違うところを指すほうが速い
  • お願いするのは、最初の45分だけ

うちからお願いすることは、ほとんどありません。


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