工務店さんとの打ち合わせで、私が聞かないこと
要件定義と発注の実務 | キューポイントのやり方 1本目 全5本
最初のお打ち合わせは、45分です。
短いと言われます。前に頼んだ会社では2時間かかった、A4で10枚のヒアリングシートを渡された、という話も聞きます。
45分で終わるのは、手を抜いているからではありません。聞かないことを、先に決めているからです。
長いヒアリングシートは、なぜ長いのか
先に、他社さんの悪口ではないことを書いておきます。
長いヒアリングシートを配る会社が、不親切なわけではありません。分からないから聞いているだけです。分からないものは、聞くしかない。むしろ誠実な対応です。
ただ、渡される側から見ると、こうなります。
こちらが分からないことを、そちらに埋めてもらっている。
そして埋めるのは、たいてい本業のあとの時間です。現場から戻って、見積を作って、そのあとにA4を10枚。そこで止まります。
私が見てきた限り、サイト制作が遅れる原因の多くはこれです。作る側が遅いのではなく、待っているんです。
だから、聞かないことを決めました
工務店さんとのお打ち合わせで、私が聞かないことです。
| 聞かないこと | なぜ |
|---|---|
| サイトの目的 | 結局は来場と資料請求です。ほぼ例外がありません |
| どんなページが必要か | 施工事例、家づくりの流れ、スタッフ、会社概要。だいたい決まっています |
| 誰が見るか | 30〜40代のご夫婦。土日。ほとんどスマートフォンです |
| 競合はどこか | 同じ規模の地元の会社と、ハウスメーカーです |
| いまの課題 | 施工事例は溜まっているのに、整理されていない。ほぼこれです |
| なぜ更新できていないか | 現場が忙しいからです。それ以外を聞いたことがありません |
これらは、聞かなくても大きく外れません。 何十社かやってくると、そうなります。
だから聞きません。聞くと、45分が2時間になります。そして2時間かけて出てくる答えは、私がすでに知っていることです。
代わりに、必ず聞くこと
こちらは、会社ごとにまったく違います。
| 必ず聞くこと | なぜ |
|---|---|
| どんな家を作りたい会社なのか | 性能なのか、デザインなのか、価格なのか、素材なのか。ここが全部の土台です |
| どんな問い合わせが来ると、困るか | いちばん答えが割れます。そして、いちばん効きます |
| 同じ地域の他社と、実際に何が違うのか | 「丁寧です」ではなく、具体的に何が |
| どこまで建てに行くか | 商圏です。書き方が変わります |
| 社長と現場の雰囲気 | 写真とコピーの調子が、ここで決まります |
45分の大半は、この5つに使います。
2つ目について、少し書かせてください。「どんな問い合わせが来ると困るか」は、聞くと少し戸惑われる質問です。たいていは、来てほしい人のほうを聞かれ慣れているので。
でも、これがいちばん効きます。来てほしい人を聞くと、どの会社も似た答えになるからです。「家づくりに真剣なご家族」と。
困る問い合わせのほうには、その会社の考え方がはっきり出ます。予算が合わない相談なのか、対応できない工法の相談なのか、遠すぎる場所なのか。 ここが分かると、サイトで何を先に書くべきかが決まります。
サイトは、集める道具であると同時に、来なくていい問い合わせを減らす道具でもあります。減らしたいものを聞かずに作ると、そこだけ設計が抜けます。
宿題を出さないために必要なもの
私は、お客さまに宿題を出しません。原稿も、写真の選定も、こちらでやります。
これを「親切ですね」と言っていただくことがあるのですが、少し違います。
宿題を出さないために必要なのは、優しさではありません。
こちらが推測できる量です。
推測できなければ、聞くしかない。聞くということは、相手の時間をもらうということです。
推測できる範囲が広がった分だけ、聞かなくてよくなりました。 それだけの話です。
どうやって増えたか
これまで、業界はいろいろでした。
この業界では「専門特化しろ」「業界を絞れ」とよく言われます。そのほうが効率がいいのは、そのとおりだと思います。
私のところは、そうなりませんでした。工務店も、福祉も、採用も、規制のある業種も。順番に来たものをやってきました。
そのおかげで、ひとつ分かったことがあります。業界ごとの型よりも、会社ごとの違いのほうが大きい、ということです。
同じ工務店でも、性能で選ばれている会社と、デザインで選ばれている会社では、書くことが変わります。逆に、業界が違っても「聞かなくていいこと」はよく似ています。
だから「工務店に強いです」と言うとき、それは戦略ではなく、やってきた順番の話をしています。
それでも、推測は外れます
ここが大事なところです。
聞かずに推測して進める以上、外れることがあります。 当然です。
だから、1週間後にデモをお見せします。 全ページ分、文章と写真が入った状態でお持ちします。
このデモが何なのかというと、私の推測の答え合わせです。
「45分でこう受け取りました。こういうことでしょうか」
違っていたら、そこで言っていただければいい。言葉で説明を受けて想像するより、見て違うと言うほうが、ずっと簡単です。
そして外れていたら、そこでもう一度うかがいます。 何がどう違うのかを聞いて、調整します。
なぜ45分の話だけで全ページ分が出せるのかは、なぜ1週間で全ページ分のデモが出せるのかに書きました。
つまり私は、聞くのをやめたわけではありません。聞く順番を変えただけです。先に見せて、外れたところだけ聞く。この順番なら、お客さまは何もないところから答えを作らずに済みます。
まとめ
- 45分で終わるのは、聞かないことを決めているから
- 聞かないでいられるのは、推測できる範囲を広げてきたから
- 推測は外れるので、1週間後にデモで答え合わせをする
- 外れていたら、そこでもう一度うかがって調整する
聞かないのではなく、聞く順番を変えた。それだけのことです。