要件定義と発注の実務

要件定義書のサンプルを見て、逆に手が止まる理由

目 次

  1. 要件定義書のサンプルで、よくある止まり方
  2. サンプルを見ると手が止まる、3つの理由
  3. 1. サンプルには、決める過程が載っていません
  4. 2. 出どころが、大きな開発案件のことがあります
  5. 3. 「目的」の欄が、立派に書かれています
  6. 要件定義書のサンプルには、別の使い道があります
  7. 「サンプル」と「記入例」は別のものです
  8. AIで作ると、サンプルのようなものは一瞬でできます
  9. サンプルが埋まらないままでも、進められます
  10. 向くケース・向かないケース
  11. この記事が当てはまるケース
  12. 当てはまらないケース
  13. 締め

要件定義書のサンプルを探して、見つけて、開いて、そのまま閉じた。 そういう方は多いと思います。

手が止まるのは自然なことです。サンプルは決まったあとの姿であって、決めるための手順書ではないからです。

完成した書類をいくら眺めても、自分の会社の場合に何をどう書けばいいかは出てきません。


要件定義書のサンプルで、よくある止まり方

書けないのではなく、出せない。 サンプルを開いたあと、だいたい次のどれかになります。

  • 1ページ目で止まる。 「サイトの目的」の欄が立派すぎて、同じ水準で書ける気がしない
  • 全体を眺めて閉じる。 項目が多く、どこから手をつければいいのか分からない
  • 半分ほど埋めて放置する。 書けるところだけ埋めたが、残りが埋まらないので出せない

3つ目がいちばん多いように思います。書けないのではなく、出せないという状態です。


サンプルを見ると手が止まる、3つの理由

1. サンプルには、決める過程が載っていません

サンプルは、すでに決め終わった会社の書類です。

そこに書かれているのは結論だけで、どうやってその結論にたどり着いたかは残っていません。 どの項目から考え始めたのか、途中で何を変えたのか、何を捨てたのか——決める作業に必要な情報は、完成した書類からは消えています。

料理の完成写真を見ても、手順は分からないのと同じです。

2. 出どころが、大きな開発案件のことがあります

インターネットで見つかる要件定義書のサンプルは、システム開発向けのものが少なくありません。業務システムや基幹システムを想定した書式です。

そうした案件では、関わる人数も多く、後戻りの費用も大きいため、書類が厚くなるのは当然です。

ただ、会社案内や採用サイトを作るのに、同じ厚みの書類は要りません。過剰な書式を前にして手が止まっているだけ、という場合があります。

3. 「目的」の欄が、立派に書かれています

サンプルの1ページ目には、たいてい目的や背景が長く書かれています。よく整った文章です。

そして、それを見た方は「同じように書かなければ」と思われます。ここで止まります。

私たちの経験を正直に書くと、目的の欄は、長く書かれているほど読まれません。

打ち合わせでも、そこは深掘りして伺う項目なので、書かれた文章をなぞって確認することはしません。「なんでそう思われたんですか」と直接お聞きするほうが、はるかに具体的な話が出てきます。

つまり、いちばん手が止まりやすい欄が、いちばん書く意味の薄い欄だったりします。要件定義そのものの考え方はWebサイトの要件定義とは何かに書いています。


要件定義書のサンプルには、別の使い道があります

埋めるための見本ではなく、何を聞かれるのかを知る目次として使ってください。

捨てなくて大丈夫です。見方を変えると使えます。

❌ 埋めるための見本として見る完成度が高いので、比べると手が止まります
⭕ 何を聞かれるのかを知る目次として見る「こういうことを聞かれるのか」が分かれば十分です

目次として見るなら、埋める必要はありません。

打ち合わせで何を聞かれるのか、事前に分かっているだけで、当日の話は速く進みます。サンプルの本当の価値は、そこにあると思っています。


「サンプル」と「記入例」は別のものです

手が止まる原因になるのは、サンプルのほうです。 紛らわしいので、分けて書いておきます。

何が載っているか
サンプルよその会社の、完成した書類
記入例自分の会社の場合、どう書けばいいかの例

手が止まる原因になるのは前者です。後者は、止まりません。

私たちが配布している要件定義書テンプレート【記入例つき】は、後者の形にしています。全34項目に記入例をつけ、さらに「必ず要ります/あると助かります/こちらで引き受けます」の判定を入れました。

書いていただきたいのは、34項目のうち11項目です。そして、長く書いていただきたい項目は、ひとつもありません。


AIで作ると、サンプルのようなものは一瞬でできます

形は整いますが、手が止まる原因は消えていません。

最近、生成AIで作った要件定義書をお持ちいただくことが増えました。

これは、ある意味でサンプル問題の裏返しです。サンプルのような立派な書類が、数分で手に入るようになりました。

ただ、手が止まる原因が消えたわけではありません。形は整いますが、分量が多くなり、ご本人も最後まで読み返していないことが多いからです。

それでも、その書類は嘘ではありません。AIに投げる前の元の言葉はご本人のものなので、芯は本物です。AIが肉をつけすぎているだけです。

捨てなくて大丈夫です。「これは自分の言葉だ」と思える部分だけ拾い直せば、それで十分に使えます。


サンプルが埋まらないままでも、進められます

埋まらなかった部分は、デモを見ながら決めていきます。

ご相談のとき、いちばん多く聞く第一声があります。

「ホームページについて、全然詳しくないんですが」

詳しくなくて構いません。サンプルを開いて閉じたところで止まっている、という状態のまま相談に来られる方は多いです。イメージが湧かない状態については「イメージが湧かない」まま、進める方法がありますに書きました。

私たちは45分のヒアリングを行い、1週間後に全ページ分のデモをお見せします。埋まらなかった部分は、デモを見ながら決めていきます。

書類を完成させてから、という順番を取っていません。


向くケース・向かないケース

この記事が当てはまるケース

  • – サンプルを見つけたが、開いて閉じた
  • – 半分埋めて、そのままになっている
  • – 目的の欄で止まっている
  • – AIで作ってみたが、これでいいのか分からない

当てはまらないケース

  • – 稟議や入札で、決まった書式の提出が必要
  • – 既存システムとの連携があり、条件の整理が先に要る

この2つは、書類そのものが目的になるケースです。この場合は作る必要があります。ただ、お客さまだけで完成させていただく必要はありません。ヒアリングのあと、こちらで下書きをお作りします。


締め

サンプルを見て手が止まるのは、準備不足でも能力不足でもありません。完成品を見ても、作り方は分からないというだけです。

サンプルは目次として使ってください。埋める必要はありません。

そして、埋まらないまま相談に来ていただいて大丈夫です。書類がまったくない場合の進み方は要件定義書がなくても、Web制作は進みますに書いています。

そのままの状態でご相談ください。

要件定義書は、書かなくて大丈夫です。

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