要件定義と発注の実務

コーディング仕様書に、書くことがほとんどない理由

目 次

  1. コーディング仕様書とは
  2. 何のために書くのか
  3. コーディング仕様書に、書くことがない理由
  4. 本当に効いてくるのは、公開後です
  5. 「お知らせだけ自分で更新できるサイト」の話
  6. 公開後に、サイトが止まらないこと
  7. コーディング仕様書が、それでも必要になる場面
  8. 発注する側がコーディング仕様書を書く必要は、ありません
  9. 向くケース・向かないケース
  10. この作り方が合うケース
  11. 合わないケース

コーディング仕様書とは、Webページをどう実装するかを決めた資料です。

私たちの案件では、ここに書くことがほとんどありません。丁寧に確認しているからではなく、揺れる余地を先になくしてあるからです。

そして、そのことは公開後にもっと大きく効いてきます。


コーディング仕様書とは

デザインができたあと、それを実際のWebページとして組み立てる工程がコーディングです。上位にあたるWeb制作の仕様書については別の記事に書いています。その進め方を決めておく資料が、コーディング仕様書です。

一般的には、こういったことが書かれます。

  • 使用する技術やフレームワーク
  • ファイルの構成、命名のルール
  • 見出し・本文・ボタンなどの書き方の統一ルール
  • 対応するブラウザ、画面幅ごとの表示
  • 画像の書き出しルール

読むのは、基本的に作る人です。発注する側が書くものではありません。


何のために書くのか

目的はひとつで、認識のズレを防ぐことです。

複数人で作るとき、あるいは作った人と直す人が違うとき、ルールが決まっていないとバラバラになります。同じ見出しなのにページによって余白が違う、似たボタンが5種類ある、といった状態です。

見た目の問題だけではありません。あとから直すときに、どこを触ればいいのか分からなくなります。

だから、先にルールを決めて書き残しておく。理にかなった話だと思います。


コーディング仕様書に、書くことがない理由

私たちも、この問題が起きないようにしています。ただし、書類で防いでいません。

理由は単純で、コーディング仕様書が厚くなるのは、作り方が案件ごとに違うからです。毎回違う作り方をするなら、毎回説明が要ります。

私たちは、固定ページもブロックエディタ(Gutenberg)で編集できるように、独自のCSSの仕組みを自社で開発して使っています。 案件ごとに実装の方法を考え直していないので、説明することがほとんどありません。

ルールを書き残して守るのではなく、そもそも外れられない形にしてある、という言い方が近いと思います。

制作の一部にはAIも使っていますが、認識のズレが起きにくいのは、この仕組みによるところが大きいです。AIで浮いた時間は、文章や構成といった中身のほうに回しています(AIで浮いた時間を、中身に使う)。


本当に効いてくるのは、公開後です

正直に言うと、コーディング仕様書が薄いこと自体は、発注される方にとってどうでもいい話だと思います。

大事なのは、その副産物のほうです。

納品時に操作の説明をしていると、こう言われることがあります。

「え? このへんも更新できるんですか?」

「このへん」というのは、会社案内やサービス紹介、採用ページのことです。お知らせの投稿画面ではなく、いわゆる固定ページを指して、そうおっしゃいます。

驚かれるということは、それまでのサイトでは触れなかったということです。


「お知らせだけ自分で更新できるサイト」の話

更新できる範囲は、作り方で決まります。

誰が更新するか
お知らせ・ブログ自社で更新できる
会社案内・サービス・採用など制作会社に依頼

下の行が、あとから効いてきます。

初回のご相談で、前のサイトについて伺うと、いちばんよく聞くのがこれです。

「更新のたびに費用がかかる」

責める話ではありません。作りがそうなっていれば、依頼するしかありませんし、依頼を受けた側も作業をしているので、費用が発生するのは当然です。

問題は、そのうちに更新しなくなることです。

「文章を少し直したい」「新しいサービスを1つ足したい」——そのたびに見積もりが要るなら、だんだん後回しになります。そして数年経つと、情報が古いままのサイトが残ります。


公開後に、サイトが止まらないこと

私たちの作り方では、会社案内もサービス紹介も採用ページも、お知らせと同じように編集できます。同じ仕組みの上に乗っているからです。

すると、こういうことが起きます。

採用サイトの要件定義にも書いていますが、採用サイトを公開したお客さまから、しばらくして言われたことがあります。

「社員インタビューをどんどん増やしたい」

効いたから、もっと欲しくなった、という話です。

ここで大事なのは、この要望が公開後に出てきたことです。要件定義の段階で「社員インタビューを何本載せるか」を決めるのは、無理があります。作って、反応を見て、初めて「もっと欲しい」になります。

そして、増やせる作りだったから、増やせました。

同じ時期に、別のお客さまからはこういう連絡をいただいています。

「問い合わせが増えました。顧客からも好評です」

公開したあとに手が入るサイトと、入らないサイト。差が出るのは、たいてい公開してからです。


コーディング仕様書に書くことと書かないこと制作会社に渡すコーディング仕様書で、結果が変わる項目と、任せてよい項目の対比書いておくと効く書かなくても困らない対応ブラウザと端末クラス名の付け方表示崩れの許容範囲ファイルの構成公開後に自分で直す箇所使うライブラリの指定引き渡してもらう形式インデントの幅左は結果が変わるもの。右はやり方の話なので、任せたほうが速い

コーディング仕様書が、それでも必要になる場面

私たちの案件で書くことが少ないというだけで、不要な書類だとは思っていません。

次のような場合は、必要です。

場面なぜ
デザインと実装が別の会社間に書類がないと、認識が揃いません
保守を別の会社が引き継ぐ作った人がいなくなったあとに読む人がいます
既存システムと連携する相手側の仕様と突き合わせる必要があります
社内に開発チームがあるあとから自社で手を入れる前提なら、必須です

いずれも、関わる人が増える場合です。1社が一貫して作るなら、書類の出番は減ります。


発注する側がコーディング仕様書を書く必要は、ありません

もし「コーディング仕様書を提出してください」と言われて、この記事に来られたのでしたら、確認していただきたいことがあります。

それは、発注側が書くべきものですか。

コーディング仕様書は、実装する側が書くものです。発注する側が用意するのは、通常ありません。書類そのものがなくても進む理由は要件定義書がなくても、Web制作は進みますに書いています。

私たちの場合は、必要な案件であればこちらで作成してお渡しします。 書類が要る場合も、宿題としてはお渡ししません。

公開後にご自身で触れる作りにしておくと、月々にかかる費用にも効いてきます。内訳はホームページの維持費にまとめました。


向くケース・向かないケース

この作り方が合うケース

  • 公開後、自分たちで文章や写真を直したい
  • 前のサイトで、更新のたびに依頼が必要だった
  • 情報が古いまま放置されているページがある
  • 少しずつ育てていきたい

合わないケース

  • ページごとにまったく違う構造・表現を作りたい
  • すでに社内に開発チームがあり、自社のルールに合わせて実装してほしい

1つ目について補足すると、揃った仕組みの上に乗せる作り方なので、1ページごとに設計を変える方向とは相性がよくありません。 表現の自由度を最優先されるなら、別の作り方のほうが合うと思います。


コーディング仕様書に書くことがほとんどないのは、丁寧に確認しているからではありません。揺れる余地を先になくしてあるからです。

そして、そのことがいちばん効いてくるのは、公開してからです。会社案内も、サービス紹介も、採用ページも、ご自身で直せます。

「え? このへんも更新できるんですか?」——毎回この質問が出るということは、そうでないサイトが多いということだと思っています。

書類のことは、こちらで引き受けます。

そのままの状態でご相談ください。

要件定義書は、書かなくて大丈夫です。

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