ホームページリニューアルの要件定義で、いちばん揉めるところ
要件定義と発注の実務|リニューアルのとき 2本目 全2本
目 次
ホームページのリニューアルでいちばん揉めるのは、既存のページを消すか残すかです。
ただ、揉める本当の原因は、判断が難しいことではありません。社内で「誰が決めるか」が決まっていないことのほうです。
解き方は3つあり、いちばん効くのはいま決めないことです。
ホームページリニューアルの要件定義で、よく揉める4つ
ご相談を受けていて、社内で意見が割れやすいのは、だいたいこのあたりです。
| 揉めるところ | 典型的な対立 |
|---|---|
| 既存ページを消すか残すか | 「もう古い」対「まだ使っている」 |
| デザインの方向性 | 「今っぽくしたい」対「うちらしくない」 |
| 載せる情報の量 | 詳しく書きたい 対 すっきり見せたい |
| どこが主役か | 事業紹介 対 採用 対 事例 |
いちばん多いのは、1つ目です。
揉めるかどうかは、会社によって違います
正直に書くと、まったく揉めない会社もあります。
これは社風というより、社内の決め方が決まっているかどうかの違いだと思っています。
- – 誰が最終的に決めるか、はっきりしている会社 → 揉めません
- – 全員の合意を取ってから進める会社 → 時間がかかります
- – 決める人が決まっていない会社 → いちばん止まります
3つ目がいちばん多いように感じます。悪いことではなく、サイトを作る機会が数年に一度しかないので、決め方を用意する場面がなかっただけです。
揉める本当の理由は、判断の難しさではありません
「消すか残すか」で意見が割れるのは、どちらの意見も正しいからです。
- – 「もう古い情報だから消したほうがいい」——正しいです
- – 「営業でまだ使っているから残したい」——これも正しいです
正しい意見が2つあるとき、正しさを比べても決着しません。だから、基準を増やしても解決しないんです。
しかも、ページには作った人がいます。 何年か前に、誰かが時間をかけて書いたものです。それを「消す」と言われると、内容の話ではなく、その人の仕事を否定する話に聞こえることがあります。
こうなると、議論は長引きます。
解き方は、3つあります
1. 決める人を、先に決める
いちばん確実なのがこれです。
意見が割れたときに誰が決めるか、それだけを先に決めておきます。分野ごとに分かれていても構いません。
「デザインは社長が決める。文章は広報の担当者。採用ページは人事部長」
このような形で問題ありません。決まっていること自体が大事で、誰であるかは二の次です。
決める人がいれば、割れても止まりません。
2. 二択にしない
「消す」か「残す」かの二択にすると、どちらかが負けます。負けた側は納得しません。
第3の選択肢があります。残して、置き方を変えることです。
そのページを残したうえで、目立つ場所からは外す。ページの最後に、関連するページへの案内を1つ置く。それだけで、「読んで帰るだけ」だったページが次につながる可能性が出ます。
「消したい」の中身が「古い情報が目立つ場所にあるのが嫌」なのであれば、これで解決します。
3. いま決めない これがいちばん効きます
そして、いちばん効くのがこれです。
迷っているページは、迷ったまま公開してしまう。
そして数か月後、実際の数字を見てから決めます。
ご希望の方には、公開後もアクセス解析と記事制作をお手伝いしています。月に一度、数字を一緒に見る場を持ちます。そこで「このページ、やっぱり誰も見ていないですね」と分かれば、そのときに消せばいい。
これが強いのは、誰も負けないからです。
「あなたの意見が通らなかった」ではなく、「まだ決まっていない」で止められます。社内の関係を傷つけずに、判断を先送りできます。
そして先送りといっても、判断材料が増えるのを待っているだけです。今より確実な判断になります。
デモを見ると、議論の中身が変わります
もうひとつ、実務的な話を書いておきます。
社内の議論が長引くのは、話している対象が抽象的だからという面があります。
「トップページはもっとすっきりさせるべきだ」「いや、情報は多いほうがいい」——この議論は、何時間やっても決まりません。お互いが違うものを想像しているからです。
私たちは、45分のヒアリングのあと、1週間で全ページ分のデモをお出しします。実物が出た瞬間に、議論の中身が変わります。
「この見出しは現場の言い方と違う」「この写真は5年前のものです」「ここに載っている工法、もうやってないですよ」——こういう指摘が出てきます。
抽象論のときは対立していた人同士が、実物を前にすると同じ側から見はじめることがあります。
社内の調整は、実物ができてからのほうが早く終わります。
それでも解けない場合
正直に書いておきます。
ここまでの3つで、たいていは進みます。ただ、解けないケースが1つだけあります。
こちらと、直接やり取りができない場合です。
デモをお出ししても、それに対する反応が返ってこない。あるいは、間に入った方を経由するうちに、社内で実際に何が議論されているのかが分からなくなる。こうなると、私たちは打つ手がありません。
言葉にできない状態から進める方法は「イメージが湧かない」まま、進める方法がありますに書いています。意見が割れていること自体は、まったく問題ありません。割れている中身が見えていれば、デモの形を変えたり、両方の案を出したりできます。
問題になるのは、割れているかどうかも分からない状態のほうです。
ですので、ご相談のときに私たちが確認したいのは、社内の合意が取れているかどうかではありません。やり取りができる状態かどうかです。
何を引き継ぐかの整理はサイトリニューアルの要件定義。既存サイトのどこを引き継ぐか、決める人の決め方は社内の誰が書くべきか、決めきらずに進める話は要件が固まらないまま進めた案件に書きました。
向くケース・向かないケース
この進め方が合うケース
- – 社内で意見が割れていて、着手できていない
- – 決める人が決まっていない
- – 消すか残すかで、半年止まっている
- – 議論が抽象的なまま進まない
合わないケース
- – こちらと直接やり取りができない体制になっている
- – 着手前に、社内の合意を書面で確定させる必要がある
1つ目のほうが決定的です。合意が取れていないことは、こちらで吸収できます。やり取りができないことは、吸収できません。
締め
リニューアルでいちばん揉めるのは、既存ページを消すか残すかです。
ただ、原因は判断の難しさではなく、決め方が決まっていないことのほうです。ですので、基準を増やしても解決しません。
決める人を先に決める。二択にしない。そして、いま決めない。
迷っているページは、迷ったまま公開して構いません。数か月後に数字を見て決めれば、誰も負けずに済みます。
こういう連絡をいただいたことがあります。
「いろいろさまざまな要望や変更に応えてもらいありがとうございます」
途中で何度も変わっても、困りません。そういう作り方をしています。
社内が割れたままで結構です。そのままの状態でご相談ください。
要件定義書は、書かなくて大丈夫です。