採用サイトの要件定義。求人票と何が違うか
要件定義と発注の実務|業種・サイト種別ごと 1本目 全3本
目 次
求人票と採用サイトは、書くことが違います。 求人票は条件を伝える書類で、採用サイトは働いている様子を見せる場所です。
ですので、要件定義で決めるべきことも変わります。
そして先に正直に書いておくと、採用サイトでいちばん効いた要素は、要件定義の段階では決められませんでした。
求人票と採用サイトの違い
まず、役割が違います。
| 求人票 | 採用サイト | |
|---|---|---|
| 書くもの | 条件(給与・勤務地・時間・休日・待遇) | 働いている様子 |
| 読まれる場面 | 応募を決める直前 | 応募するか迷っている段階 |
| 形式 | ほぼ決まっている | 自由 |
| 比べられ方 | 他社の求人票と横並び | 比較されないことが多い |
いちばん大きいのは、読まれる場面です。
求人票を見る人は、もう応募を検討しています。条件が合うかどうかを確認しています。
採用サイトを見る人は、その前の段階にいます(「その業界の実績はありますか」と聞かれたときの、正直な答えにも同じ話を書いています)。「この会社、どうなんだろう」を確かめています。まだ迷っています。
ここを混同すると、採用サイトに条件が並ぶことになります。求人票に書いてあることを、もう一度きれいに並べたページです。よく見かけますが、迷っている人の役には立ちません。
求人票に書けることは、求人票に書けば足ります。 サイトでは、求人票に書けないことを扱ったほうがいいと考えています。
採用サイトの要件定義で、決められること
採用サイトを作るとき、先に決められる項目はこのあたりです。
- – 募集する職種と、それぞれのページが要るか
- – 応募の導線(フォーム/電話/既存の求人媒体へ渡すか)
- – 新卒と中途を分けるか、一緒にするか
- – 会社のサイトの中に作るか、独立させるか
- – 公開の時期(採用の動き出しに間に合うか)
このあたりは、45分お話を伺えば決まります。書類にしていただく必要はありません。
何を書いて何を書かないかは要件定義書の34項目を「書く/書かない」で仕分けしました、45分のヒアリングの中身は別の記事に書いています。
採用サイトの要件定義では、決められないこと
ここからが本題です。
決められないのは、誰の、どの話を載せるかです。
もう少し正確に書くと、載せる人は決められます。決められないのは、どの話が応募される方に効くかのほうです。
作る前には、分かりません。仮説は立てられますが、当たっているかは公開してみないと分かりません。
実際に起きたこと
採用サイトを公開してしばらく経ったあと、お客さまからこう言っていただきました。
「社員インタビューをどんどん増やしたい」
これは、感想ではありません。要望です。 しかも、作る前には出ていなかった要望です。
作っている段階では、社員インタビューは構成の一部でした。何本か載せましょう、という話です。「どんどん増やしたい」という強さでは語られていませんでした。
効くと分かったのは、公開してからでした。
そして、これが採用サイトでいちばん効いた要素になりました。要件定義書に書き切れなかった部分が、いちばん効いた、ということです。
だから、あとから増やせる作りにしています
「増やしたい」と思っていただいたときに増やせないと、その気持ちは消えます。
見積を取って、依頼して、数週間待って——という手順が必要だと、たいてい途中でやめてしまいます。忙しいので当然です。
私たちは、固定ページも編集できる自社のCSSシステムを使っています。お知らせだけでなく、採用ページも、社員インタビューも、お客さまご自身で足していただけます。
採用サイトは、公開した日がいちばん充実している——という状態になりがちです。人が入れ替われば、載っている社員はもう辞めているかもしれません。足せる作りかどうかで、1年後の中身がかなり変わります。
要件定義の段階で決めておきたいのは、載せる内容そのものより、あとから足せるかどうかのほうです。
応募する方が知りたいことは、業種が変わっても似ています
採用サイトを何本か作ってきて感じているのは、知りたいことの型は共通しているということです。私たちは福祉・介護や建設・工務店の採用サイトを多く手がけていますが、そこはあまり変わりません。
- – 一緒に働くのは、どういう人か
- – 1日が、どう流れるか
- – 入ってから、何ができるようになるか
- – 続けている人は、なぜ続けているか
変わるのは中身で、型は共通しています。
ですので、業種ごとに構成を大きく変えることはしていません。中身のほうを、45分の打ち合わせで伺います。
ただ、これは数字で検証したわけではなく、作ってきた実感としての話です。断定はできません。
公開後に自分でページを増やせる理由はコーディング仕様書に、書くことがほとんどない理由、決めきらずに進める話は要件が固まらないまま進めた案件に書きました。
ひとつだけ、先に決めておくと効くこと
要件定義の段階で決めておくと、あとが明らかに変わることがひとつあります。
公開後、誰が社員インタビューを足すか。
これが決まっていないと、増えません。仕組みがあっても、増やす人がいなければ同じことです。
そして、この役は誰でもいいわけではありません。社員に声をかけて、話を聞いて、載せる——という動きが要ります。社内の人間関係が見えている方のほうが、うまくいきます。
これも、打ち合わせの中で伺います。社内で先に決めてきていただく必要はありません。 「たぶんこの人かな」くらいの話で構いません。
採用サイトの費用について
採用サイトの費用は、基本的にページ数で決まります。職種が多ければページが増えます。
そのうえで、後の費用のほうが差が出ます。
社員インタビューを1本足すたびに依頼が必要な作りだと、増やすほど費用がかかります。増やしたくなるほど、費用が積み上がります。
ご自身で足せる作りなら、そこはかかりません。採用サイトは公開後に増えていくものなので、ここは最初に確認しておく価値があると思います。
全体の日程は要件定義から公開まで、実際のスケジュールを出します、工務店・建設業の場合は工務店・建設業のサイト要件定義で、よく抜ける項目に書いています。
向くケース・向かないケース
採用サイトを作ったほうがいいケース
- – 求人媒体には出しているが、応募が来ても定着しない
- – 条件では他社に勝てないが、中身には自信がある
- – 見学や面接で説明していることを、先に伝えておきたい
- – 社員に、話してくれそうな方がいる
急がなくていいケース
- – 募集が単発で、来年以降の予定がない
- – 社内に、公開後に更新できる方がいない
- – 求人票の条件だけで、十分に応募がある
2つ目については、正直に書くと、作っても止まります。更新する方が決まってから作るほうが、結果的に早いと思います。
締め
求人票は条件を伝える書類、採用サイトは働いている様子を見せる場所です。求人票に書けることを、サイトで繰り返す必要はありません。
要件定義で決められるのは、職種・導線・構成・公開時期まで。どの話が効くかは、公開してからしか分かりません。 ですので、あとから足せる作りにしておくことのほうが大事だと考えています。
先に決めておいていただきたいのは、公開後に足す方が誰か、ということくらいです。それも、打ち合わせで伺います。
まだ何も決まっていない段階で構いません。そのままの状態でご相談ください。
要件定義書は、書かなくて大丈夫です。