要件定義と発注の実務

工務店・建設業のサイト要件定義で、よく抜ける項目

目 次

  1. 工務店・建設業の要件定義で、よく抜ける項目5つ
  2. 1. 施工エリア
  3. 2. 施工実績の「並べ方」
  4. 3. 写真を、誰がどう用意するか
  5. 4. 問い合わせの種類分け
  6. 5. 許可・資格・保証の表示
  7. 抜けていても、進みます
  8. 施工実績は、公開後に増えていきます
  9. 数字について、書けること
  10. 「工務店の実績があるから」ではありません
  11. 向くケース・向かないケース
  12. この記事が役に立つケース
  13. あまり関係がないケース
  14. 締め

工務店・建設業のサイトには、要件定義の段階では出てこないのに、作り始めると必ず必要になる項目があります。

施工エリア・実績の並べ方・写真の入手経路・問い合わせの種類分け。どれも「言われれば当たり前」ですが、書類の項目には入っていないことが多いものです。

ただし、抜けていても進みます。 こちらから伺うので、事前に埋めていただく必要はありません。


工務店・建設業の要件定義で、よく抜ける項目5つ

1. 施工エリア

どこまで対応するか。これが書かれていないサイトは、かなりあります。

読む側からすると、最初に確認したい情報です。自分の家が範囲に入っていなければ、その先を読む意味がありません。

書いていないと何が起きるかというと、範囲外の方から問い合わせが来ます。 そしてお断りすることになります。両方にとって、時間の無駄です。

「◯◯市を中心に、車で1時間圏内」くらいの粒度で構いません。厳密でなくていいので、あるかないかが大きい項目です。

2. 施工実績の「並べ方」

実績を載せることは、たいてい決まっています。抜けるのは並べ方のほうです。

読む方は、実績を鑑賞しているわけではありません。自分の家に近いものを探しています。

  • – 新築か、リフォームか
  • – 規模(坪数・階数)
  • – 構造
  • – 場所
  • – おおよその価格帯

このどれかで絞れないと、新しい順に並んだ写真の列を延々と見ることになります。そして途中でやめます。

要件定義の段階で決めておきたいのは、何で分類するかです。あとから分類を足すのは、載せる本数が増えているほど大変になります。

3. 写真を、誰がどう用意するか

これがいちばん止まりやすい項目です。

工務店・建設業のサイトは、写真がほぼすべてと言っていいと思います。ところが、実際に着手すると次のような話が出てきます。

  • – 竣工写真が、担当者の携帯の中にしかない
  • – 施主に、公開の許可を取っていない
  • – いい写真はあるが、古い
  • – 現場の写真はあるが、完成の写真がない

これは要件定義書の項目にはありません。 でも、ここで止まります。

私たちの場合、45分の打ち合わせ写真がどのくらいあるかは必ず伺います。少なければ、少ない前提で作ります。撮影が必要なら、その分の期間を見込みます。

正直に「あまりない」と言っていただくのがいちばん助かります。無いことが分かっていれば、埋め方があります。

4. 問い合わせの種類分け

「お問い合わせはこちら」の一本だけ、というサイトはよくあります。

工務店の場合、来る相談は同じではありません。

種類相手の状態
新築の相談検討期間が長い。まだ情報収集の段階
リフォーム具体的な困りごとがある
点検・修理急いでいる
資料請求・見学話をする前に、材料が欲しい

一本にまとめると、急いでいる方と、じっくり検討している方が、同じフォームに来ます。受ける側も、返し方が変えられません。

分ければいい、という単純な話でもありません(増やしすぎると迷わせます)。ただ、分けるかどうかは、先に決めておく項目です。

5. 許可・資格・保証の表示

建設業許可番号、加入している保険、保証の内容、所属している団体。

このあたりは、書き忘れというより「わざわざ書くことでもない」と思われていることが多い項目です。

ただ、読む側にとっては違います。初めて見る会社が信用できるかを、他に判断する材料がありません。 特に、金額の大きい買い物なので。

社内では当たり前のことほど、抜けます。


抜けていても、進みます

ここまで5つ挙げましたが、事前に埋めてきていただく必要はありません。

私たちは、45分の打ち合わせで伺える範囲を伺い、聞ききれなかった部分はこれまでの案件から補って、1週間後に全ページ分のデモをお出しします。

抜けている項目は、デモを見た瞬間に分かります。

「あ、施工エリアが入ってない」

「実績、これだと探せないね」

無いものは、あるはずの場所を見たときに気づきます。リストを読んで気づくのとは、経路が違います。

ですので、この記事はチェックリストとして使っていただく必要はありません。 読んで「そういうものか」と思っていただければ十分です。


抜けている項目は1週間後のデモで埋まります。34項目の仕分けは要件定義書の34項目を「書く/書かない」で仕分けしましたに書きました。


施工実績は、公開後に増えていきます

工務店のサイトで、公開後にいちばん増えるのが施工実績です。当然ですが、仕事をするたびに増えるので。

問題は、増やすたびに依頼が必要かどうかです。

1件足すのに見積と依頼が要る作りだと、たいてい止まります。忙しいので、後回しになります。そして半年経つと、サイトの実績は公開時のまま止まっています。

私たちは、固定ページも編集できる自社のCSSシステムを使っています。お知らせだけでなく、実績も、施工事例のページも、ご自身で足していただけます。

納品時の操作説明で、こう言われることがあります。

「え? このへんも更新できるんですか?」

褒め言葉というより、質問として言われます。触れない場所だと思っていた、ということです。

工務店のサイトは、公開した日が完成ではありません。 実績が増えていくことを前提にした作りかどうかで、1年後の中身がかなり違います。


数字について、書けること

ある工務店のサイトでは、モデルハウスの予約が、月1件ほどから月4〜5件になっています。 公開前の実測と比べた数字で、現在も動いている案件です。

ただ、これは1社の結果です。同じ結果をお約束できるものではありません。 立地も、扱っている工事も、もともとの認知度も違います。

補足すると、これは「問い合わせが増えた」という話ではなく、予約という具体的な行動が増えたという話です。何が何件増えたのかがはっきりしているぶん、判断の材料になります。

書いておきたいのは、増えた要因が特別なことではなかった、ということのほうです。施工エリアを書いた、実績を探せるようにした、問い合わせを分けた——この記事に挙げたような項目です。

派手なことはしていません。


公開後にご自身でページを増やせる理由はコーディング仕様書に、書くことがほとんどない理由に書いています。


「工務店の実績があるから」ではありません

最後に、正直なところを書きます。

私たちは工務店・建設業のサイトを多く手がけています。ただ、この業種の実績があるから作れる、という話ではないと思っています。

補っているのは業界の知識ではなく、サイトとしての型のほうです。ページの順番、問い合わせの直前に見られる場所、写真が少ない会社の埋め方——このあたりは、業種が変わっても共通しています。

変わるのは中身で、型は共通しています。

実績があると有利になるのは、打ち合わせの速さです。同じ45分でも、前提の説明を省ける分だけ密度が上がります。ただ、これは時間の差であって、出来上がるものの質の差ではありません。

初めての業種でも、その業種向けの質問を用意してから打ち合わせに臨みます。そして、外していればデモで分かります。答え合わせの場があるので、最初の理解の精度が決定的になりません。

ですので、この記事を読んで「うちは工務店じゃない」と思われた方も、進め方は変わりません。


この話の続きは「その業界の実績はありますか」と聞かれたときの、正直な答えに、作り直しの場合はサイトリニューアルの要件定義、採用向けは採用サイトの要件定義に書きました。


向くケース・向かないケース

この記事が役に立つケース

  • – サイトはあるが、問い合わせが来ない
  • – 実績を載せているが、見られていない気がする
  • – 写真が古いまま止まっている
  • – リニューアルを検討していて、何を直すか決まっていない

あまり関係がないケース

  • – 元請けからの受注が中心で、一般の方が見ることがない
  • – 施工エリアが全国で、地域で絞る意味がない
  • – すでに問い合わせが処理しきれないほど来ている

1つ目については、サイトの役割が変わります。採用や、取引先への信用のために作る、という話になります。その場合も作る価値はありますが、目的が違うので、伺う内容も変わります。


締め

工務店・建設業のサイトで抜けやすいのは、施工エリア・実績の並べ方・写真の入手経路・問い合わせの種類分け・許可や保証の表示です。どれも、書類の項目には入っていないことが多いものです。

ただ、抜けていて構いません。打ち合わせで伺いますし、抜けていればデモを見たときに分かります。

事前に整理していただく必要はありません。そのままの状態でご相談ください。

要件定義書は、書かなくて大丈夫です。

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