要件定義と発注の実務

要件定義書を求める制作会社と、求めない制作会社の違い

目 次

  1. 要件定義書を求める制作会社が、求める理由
  2. 要件定義書を求めない制作会社が、求めない理由
  3. 要件定義書がないと、何で比べればいいのか
  4. どちらのタイプかは、初回のやり取りで分かります
  5. 正直に書いておくこと
  6. 私たちは、営業が得意な会社ではありません
  7. 断られた理由は、たいてい教えていただけません
  8. 両方に頼む、という選択もあります
  9. 向くケース・向かないケース
  10. 求めない会社(私たちのような進め方)が合うケース
  11. 求める会社のほうが合うケース
  12. どちらでも難しいケース
  13. 締め

要件定義書を求める制作会社と、求めない制作会社がいます。違いは技術力や丁寧さではなく、進め方の構造です。

求める会社には求めるだけの理由があり、その理由は正当です。求めない会社は、書類が担っていた役割を別の仕組みで引き受けています。

どちらが向くかは、発注される側の状況で決まります。見分け方は、初回のやり取りでだいたい分かります。


要件定義書を求める制作会社が、求める理由

まず、こちらから書きます。書類を求めるのには、はっきりした理由があります。

理由中身
並行案件が多い同時に何本も動かす体制だと、担当者の記憶に頼れません。書面が要ります
見積の精度書かれていないものは見積れません。範囲が定まらないと金額が出せません
合意の記録あとで食い違ったときに、開いて確認できるものが必要です
引き継ぎ担当が変わっても続けられるように
距離がある発注元と制作の現場が離れている場合、書面以外に伝える手段がありません

どれも、まっとうな理由です。特に規模の大きい案件や、複数社が関わる案件では、書類がないほうが危ないと思います。

「要件定義書を出してください」と言われたら、その会社が不親切なわけではありません。 そういう体制で動いている、というだけです。


要件定義書を求めない制作会社が、求めない理由

私たちは求めないほうです。理由を書きます。

要件定義書を持ってきてくださったお客さまと、持たずに来られたお客さまで、進み方がそんなに変わらなかったからです。22年、年間40本ほどのペースで作ってきた実感です。

持ってきていただいた書類は、ちゃんと使います。読みますし、気になる点はお伝えします。ただ、進行の速さは変わりませんでした。

理由は、書類が担っていた役割を、別の場所で引き受けているからです。

書類が担うもの私たちの場合
認識合わせ1週間後のデモ(全ページ分・文章と写真入り)

書類の5つの役割をデモがどこまで引き受けられるかは、要件定義書を書く代わりに、デモを見る。何が変わるかに書きました。

見積の根拠同上。見えているものが、そのまま量です
決めきれない部分あとから直せる作りにしてあります

「要らない」のではなく、「別の場所で済んでいる」というのが正確なところです。


要件定義書がないと、何で比べればいいのか

ここは当然の疑問だと思います。

複数社を検討するとき、要件定義書があれば条件を揃えて比べられます。無い場合、何を見て判断するのか。

答えは、デモです。 私たちの場合、ご相談から1週間で全ページ分をお出しします。

そして、比べる相手が変わります。

デモをご覧いただいたときに、こう言っていただいたことがあります。

「これでも今のサイトより全然いいよね」

このとき、比較されているのは他社の提案書ではありません。今、自社が持っているサイトです。

これはリニューアルのご相談で、よく起きます。他社と横に並べて優劣をつける前に、「今より良くなるのか」がまず分かる。判断としては、こちらのほうが実際的だと思います。

実際に提案書からデモ先行に切り替えて何が起きたかは、デモ先行に切り替えて、受注率が10%前後から20%前後になりましたに書きました。

もちろん、条件を揃えて複数社を比較したいという場合はあります。その場合は書類が要ります。私たちにご依頼いただければ、45分お話を伺ったあとに、こちらで下書きを作ります(記入例つきのテンプレートも配布しています)。書いていただく作業はありません。


どちらのタイプかは、初回のやり取りで分かります

見分け方を書きます。難しいことはありません。

最初に連絡したときに、何を求められるかを見てください。

言われることその会社の進め方
「要件をまとめた資料はありますか」書類を起点に進める体制
「一度お話を聞かせてください」読み合わせを起点に進める体制
「まず概算をお出ししますので、仕様を」見積を先に固める体制
「一度、形にしてお持ちします」現物を先に出す体制

繰り返しますが、どれが優れているという話ではありません。

見るべきなのは、その進め方が自社に合うかです。

  • – 資料を作る時間が取れるか
  • – 社内の確認が、どのくらいの速さで回るか
  • – 完成形のイメージを、今持てているか
  • – 書面で残す必要がある手続きが、社内にあるか

このあたりで、合う・合わないが決まります。


正直に書いておくこと

2つあります。

私たちは、営業が得意な会社ではありません

うまく説明して決めていただく、ということができません。これは事実として書いておきます。

デモを先にお出しするのは、その代わりというよりも、お客さまがイメージを持てないまま進んでしまうのを避けるためです。見ていただければ、こちらが説明する必要がありません。

断られた理由は、たいてい教えていただけません

ご相談をいただいて、そのままになることはあります。そのとき、なぜ選ばれなかったのかは、ほとんど分かりません。

ですので、「求めない会社のほうが選ばれやすい」という書き方はしません。そう言えるだけのデータを、私たちは持っていません。

分かっているのは、進め方を変えてから、決まる件数が増えたということだけです。


両方に頼む、という選択もあります

意外に思われるかもしれませんが、要件定義と制作を別々の会社に頼む進め方もあります。

書類が先に必要な事情(入札・稟議・複数社比較)があるなら、これは合理的です。私たちも、要件定義だけのご依頼はお受けしています。

その場合に確認しておいたほうがいいことが3つあるのですが、長くなるので別の記事に書きました。


要件定義だけを外注する場合は要件定義だけを外注できるか、書類なしで進む理由は要件定義書がなくても、Web制作は進みます、リニューアルの場合はサイトリニューアルの要件定義に書いています。


向くケース・向かないケース

求めない会社(私たちのような進め方)が合うケース

  • – 書類を作る時間が取れない
  • – 完成形のイメージがまだ湧いていない
  • – 社内の確認に時間がかかる体制になっている
  • – リニューアルで、今より良くなるかをまず知りたい

求める会社のほうが合うケース

  • – 入札や、書面での取り決めが必要な手続きがある
  • – 複数社を同一条件で比較したい
  • – 発注元と利用部門が分かれていて、経緯を残す必要がある
  • – 社内に、要件を書ける方がいらっしゃる

どちらでも難しいケース

  • – 制作会社と直接やり取りができない体制になっている

私たちの進め方は、出したものに反応が返ってくることに全面的に依存しています。反応がないと、答え合わせが成立しません。ここは、こちらでは埋められない部分です。


締め

要件定義書を求めるかどうかは、制作会社の優劣ではありません。進め方の構造の違いです。

求める会社には、並行案件・見積の精度・記録・引き継ぎという理由があります。求めない会社は、書類の役割を別の場所で引き受けています。私たちの場合は、45分のヒアリングと、1週間後のデモです。

どちらが向くかは、御社の状況で決まります。判断がつかない段階でも構いません。そのままの状態でご相談ください。

要件定義書は、書かなくて大丈夫です。

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