要件定義書の34項目を「書く/書かない」で仕分けしました
要件定義と発注の実務|まず、全体像から 4本目 全4本
目 次
Webサイトの要件定義書に載る項目を34個に整理して、1つずつ仕分けました。
結果は、書いていただくのが11項目。書けそうなら14項目。残り9項目は記入不要です。
基準はひとつだけ。書類という形にして届くかどうかです。
要件定義書に書いていただくのは、この11項目です
先に結論を置きます。この11個だけです。
| # | 項目 |
|---|---|
| 1 | 今回サイトを作る・作り直すきっかけ |
| 2 | いま困っている場面(具体的に) |
| 3 | サイトの目的(2行で) |
| 4 | 見てほしい人(ひとことで) |
| 5 | 参考にしたいサイト(1〜3本) |
| 6 | 原稿の用意状況 |
| 7 | 既存システム・予約システム等との連携の有無 |
| 8 | 現在のドメイン・サーバー |
| 9 | 公開したい時期(およそで可) |
| 10 | 予算のおおよその幅 |
| 11 | 社内の窓口になる方と、その方が現場を持っているか |
どれも長く書く必要がありません。 1時間もかからないと思います。
そして11項目のうち、こちらから明確にお願いしているのは参考サイト1本だけです。残り10個は、もう社内にある事実を書き写していただくだけのものです。
記入例つきのExcelは、要件定義書テンプレート【記入例つき】からダウンロードできます。登録は不要です。
34項目を、何を基準に仕分けたのか
重要度ではありません。書類という形式に向いているかどうかです。
いちばん誤解されやすいところなので、先に書いておきます。「書かない」に入れた項目は、どうでもいい項目ではありません。
たとえば「各機能の詳細仕様」。入力項目の一覧も、画面遷移も、最後には全部決まります。ただ、それを着手前に文章で決めきることに意味がないというだけです。
動くものを見てから決めるほうが、速く、間違いも減ります。
| 書く | 書類にすると正確に届く項目。事実として決まっているものが多い |
| 書かない | 書類にすると、かえって届かなくなる項目。話すか、見るほうが正確 |
重要度の順位ではなく、媒体の向き不向きです。
長さについてのお願い
判定とは別に、もうひとつあります。
書いていただく11項目のうち、長く書いていただきたい項目はひとつもありません。
特に「サイトの目的」は2行で結構です。長く書かれているほど読まれにくくなる項目なので、あえて短くお願いしています。
「書かない」9項目の引き取り方
記入不要というだけで、確認しない項目ではありません。
| 引き受け方 | |
|---|---|
| ① | 打ち合わせで伺います |
| ② | デモでご確認いただきます |
| ③ | 私たちが作成します |
| ④ | 公開後に一緒に決めます |
要件定義書の34項目|判定と理由
以下、8つのグループに分けて、34項目すべてを見ていきます。
1. 背景(5項目)
| 項目 | 判定 |
|---|---|
| 今回サイトを作る・作り直すきっかけ | 書く |
| いま困っている場面(具体的に) | 書く |
| 事業内容・提供しているサービス | 書けそうなら |
| サイトの目的(2行で) | 書く |
| 中期経営計画・ブランド方針との整合 | 書かない → ① |
きっかけは、いちばん最初に書いていただきたい項目です。きれいな文章でなくて構いません。
「採用の応募が減った」「前の会社と連絡が取れなくなった」——その一行で十分です。
困っている場面は、「誰に、いつ、何を言われたか」が入っていると強くなります。
「使いにくいと思う」より「先月、お客さまからスマホで入力しづらいと言われた」のほうが、それだけで直す場所が決まります。
事業内容は、会社案内やパンフレットのデータを添えていただくだけで十分です。書き起こしは不要です。
サイトの目的は、2行で結構です。
長く書いていただくと、たいてい立派な文章になります。ただ、立派な文章になるほど、その会社らしさは消えていきます。 書いたご本人も、たぶんもう読み返しません。
「採用で応募が集まらない。応募を増やしたい」
この2行のほうが、A4一枚の目的文より正確です。
経営計画との整合は、上の2行さえいただければ、こちらから質問していきます。
2. 相手(4項目)
| 項目 | 判定 |
|---|---|
| 見てほしい人(ひとことで) | 書く |
| ペルソナシート | 書かない → ① |
| サイトで起きてほしいこと | 書けそうなら |
| KPI・数値目標 | 書かない → ④ |
見てほしい人は、一行で構いません。「30〜40代。建て替えを検討し始めたご夫婦」くらいの粒度で十分です。
ただ、ここが違うと、あとの全部がずれます。 34項目の中で、書く手間と影響の大きさの比がいちばん良い項目です。
ペルソナシートは、作るのに半日かかることがある割に、制作の判断はほとんど変わりません。
KPIは、公開後のほうが現実的な数字を置けます。公開前に決めた数字は、たいてい根拠がありません。
3. 見た目(5項目)
| 項目 | 判定 |
|---|---|
| 参考にしたいサイト(1〜3本) | 書く |
| これは違う、と感じるサイト | 書けそうなら |
| デザインの方向性を言葉で | 書かない → ① |
| ロゴ・ブランドカラー・指定フォント | 書けそうなら |
| 使える写真・動画があるか | 書けそうなら |
ここに、34項目の中で唯一こちらからお願いしている項目があります。参考サイトです。
他社のサイトでも、他業種のサイトでも構いません。1本あれば、文章10行よりも正確に伝わります。
「写真が大きくて文字が少ないところが好き」のように、どこが好きかまで書いていただけると、ほぼ外しません。
逆にデザインの方向性を言葉で書く項目は、書かないほうに入れています。
「シンプルで」「高級感のある」「信頼感が伝わる」といった言葉は、書くほうも読むほうも真面目に扱います。ただ、思い浮かべているものが一致している保証がどこにもありません。
同じ「シンプル」で、余白の多い写真中心のサイトを思い浮かべる方と、装飾のない文字だけのサイトを思い浮かべる方がいます。
私たちは、この項目を参考サイトのURLに置き換えています。 言葉で決めようとしないので、解釈違いの事故がそもそも起きません。詳しくはデザイン要件定義書は必要か。参考サイト1本のほうが正確ですに書いています。
写真は、枚数と何が写っているかだけで結構です。撮影が必要かどうかの判断に使います。
4. 中身(5項目)
| 項目 | 判定 |
|---|---|
| 今のサイトで残したいページ | 書けそうなら |
| 増やしたいページ・載せたい内容 | 書けそうなら |
| サイトマップ(全ページの階層図) | 書かない → ② |
| 原稿の用意状況 | 書く |
| 公開後、自分たちで更新したいページ | 書けそうなら |
残したいページは、迷っているものは「迷っている」と書いてください。そのまま相談の材料になります。
リニューアルのとき、アクセスはあるのに問い合わせにつながっていないページが出てきます。消す判断も残す判断もあります。
直帰率が高くても、何かで知っていただく入口としては機能していることがあるので、私たちは残すことを提案する場合があります。
サイトマップは、図を描いていただかなくて大丈夫です。デモで実際のページをご覧いただくほうが、早く、正確に決まります。
原稿の用意状況は、「まだ何もない」でも構いません。ここが分かるとスケジュールが確定します。
公開後に自分たちで更新したいページも、聞いておきたい項目です。
私たちは固定ページも編集できる仕組みでサイトを作っているので、会社案内・サービス紹介・採用ページも対象にできます。先に伺っておくと、公開後に触れる範囲を広げておけます。
このあたりの考え方は、コーディング仕様書に、書くことがほとんどない理由にも書いています。
5. 機能(4項目)
| 項目 | 判定 |
|---|---|
| 必要な機能(フォーム、ブログ、検索など) | 書けそうなら |
| 各機能の詳細仕様 | 書かない → ② |
| 既存システム・予約システム等との連携 | 書く |
| 多言語対応の要否 | 書けそうなら |
必要な機能は、名前が分かるものだけで結構です。抜けは打ち合わせで補います。
詳細仕様——入力項目の一覧、画面遷移、エラー時の挙動——は、書かないほうに入れています。
ここを先に決めきろうとすると、そこだけで打ち合わせが2回増えます。 動くものを見てから調整するほうが、速く、間違いも減ります。
なぜ1週間で全ページ分の実物が出せるのかは、なぜ1週間で全ページ分のデモが出せるのかに書きました。
既存システムとの連携だけは、書いていただく側です。あるかないかで、見積もりもスケジュールも変わるからです。
ただし「あるか、ないか」だけで結構です。「現場管理システムを使っているが、連携できるかは分からない」で十分です。中身の確認は私たちがします。
6. 環境(3項目)
| 項目 | 判定 |
|---|---|
| 現在のドメイン・サーバー | 書く |
| 前の制作会社・管理会社との関係 | 書けそうなら |
| サーバー移管の手順・技術要件 | 書かない → ③ |
ドメイン・サーバーは、分からない場合は「分からない」で結構です。調べ方をご案内します。
前の制作会社が管理していて、社内に情報が残っていないケースは珍しくありません。
前の制作会社との関係は、事実だけで結構です。移行にあたって確認が必要になることがあります。
移管の手順・技術要件は、こちらで確認して進めます。
7. 進め方(5項目)
| 項目 | 判定 |
|---|---|
| 公開したい時期(およそで可) | 書く |
| 予算のおおよその幅 | 書く |
| 社内の窓口になる方と、その方が現場を持っているか | 書く |
| 決裁の流れ | 書けそうなら |
| 詳細なスケジュール表・体制図 | 書かない → ③ |
公開したい時期は、「なぜその時期か」が書いてあると助かります。
「来年4月の採用募集に間に合わせたい」と分かれば、間に合わない場合の代案を出せます。日付だけだと、代案が出せません。
予算は幅で構いません。決まっていない場合は「決まっていない」とご記入ください。
窓口の方は、少し説明が要ると思います。
プロジェクトが止まるかどうかは、窓口の方の役職では決まりません。 総務でも広報でも社長でも、止まるときは止まります。
決まるのは、その方が現場を持っているかどうかです。
現場を持っている方は、本業が優先されます。こちらからの確認は後ろに回ります。それは仕方のないことですし、責める話でもありません。
先に伺うのは、確認を待たない進め方に切り替えるためです。待ち時間をゼロにするのではなく、待っている間もこちらは先に進めておく。
誰が書くべきかについては、ホームページの要件定義、社内の誰が書くべきかに書いています。
詳細なスケジュール表・体制図は、私たちが作成してお渡しします。
8. 公開後(3項目)
| 項目 | 判定 |
|---|---|
| 更新は自社でやりたいか、任せたいか | 書けそうなら |
| 保守・運用でしてほしいこと | 書けそうなら |
| 運用ルール・ガイドラインの策定 | 書かない → ④ |
更新の希望は、不安なままで結構です。
「できれば自分たちでやりたいが、続くか不安」——それが正直なところだと思います。続けられる範囲に合わせて設計します。
運用ルールは、運用が始まってからのほうが実態に合ったものになります。公開前に作ったルールは、たいてい守られません。
34項目の内訳
| 判定 | 項目数 |
|---|---|
| 書いていただく | 11 |
| 書けそうなら | 14 |
| こちらで引き受けます | 9 |
残りの23項目は、こちらが引き取ります。打ち合わせで伺うか、デモでご覧いただくか、私たちが作成するか、公開後に一緒に決めるか、どれかです。
記入例つきのテンプレート(Excel・登録不要)
34項目を、記入例と判定つきでExcelにまとめたものを配布しています。
使い方は要件定義書テンプレート【記入例つき】。ただし全部埋めなくて大丈夫ですに書いています。
向くケース・向かないケース
向いているケース
- – 要件定義書のテンプレートは手に入れたが、どこから埋めればいいか分からない
- – 項目が多すぎて、途中で止まっている
- – 生成AIで作った要件定義書があるが、どこが本当に必要な部分か分からない
3つ目について補足します。AIで作った書類は捨てなくて大丈夫です。
元になっているのはご本人の言葉なので、筋は通っています。上の11項目を、その書類から拾い直してみてください。そこが、ご自身の言葉で書かれていた部分です。
向いていないケース
- – 稟議や入札で、提出する項目が指定されている
この場合は、指定された項目を埋める必要があります。
ただ、その場合でも、書類をお客さまだけで完成させる必要はありません。ヒアリングのあと、こちらで下書きをお作りして、それを見ながら整えていくほうが早いです。
締め
34項目を仕分けした結果は、書いていただくのが11項目でした。しかも、どれも長く書く必要がありません。
11項目も埋まっていない状態でも、そのままの状態でご相談ください。書類がまったくない場合にどう進むかは、要件定義書がなくても、Web制作は進みますに書いています。
要件定義書は、書かなくて大丈夫です。